第63回:政治・経済的に徐々に変貌を遂げるモーリタニア

  • 2021/08/26(木)

マグレブ地域とサヘル5カ国そして、サハラ以南アフリカ諸国の接点に位置する西アフリカの一国モーリタニア・イスラム共和国は、日本の約2.7倍の国土の約85%が砂漠で、約470万人の人口は大西洋沿岸の首都ヌアクショットと経済の中心都市ヌアディブに集中している。日本にはあまり馴染みのない国だが、日本はモーリタニアの貿易相手として2021年第1四半期(1~3月)には輸出入ともに第7位にあり、特にタコの輸出の40%が日本向けだ。1960年にフランスから独立後、クーデターによる政権交代が続いていたが、2019年8月に初の民主的政権移行によりモハメド・ウルド・シェイク・ガズワニ大統領が就任して以降、モーリタニアは少しずつ変貌を遂げている。同国の最近の政治・経済動向を見ていこう。(渡辺レスパード智子=ジェトロ・パリ事務所)

■10年続いた前政権の負の遺産からの脱却

19年8月のガズワニ大統領の就任以降、08年から19年まで政権を握っていたモハメド・ウルド・アブドルアジズ前大統領とその親族および側近の汚職疑惑に対して公的な調査を求める世論が高まり、20年1月に国民議会に調査委員会が設置された。21年3月、司法当局は同調査委員会の報告書に基づいてアブドルアジズ前大統領を汚職、公費横領、マネーロンダリング(資金洗浄)の罪で起訴。6月に逮捕に踏み切り、同前大統領は検察庁によって拘留された。ガズワニ大統領は一連の汚職事件への対応で司法の独立性を強調し、同前大統領派を政権内から一掃するなど政治の浄化を図っている。国際NGO(非政府組織)「トランスペアレンシー・インターナショナル」が発表した21年度の「腐敗認識指数」では、モーリタニアは180カ国中134位で、昨年から順位が3つ上昇した。国民の31%が貧困にあえいでいるという現状を打開するのが喫緊の課題である同国で、ガズワニ大統領は就任時の公約であった貧困層の経済・社会的包摂のため、国家連帯・疎外対策総局「ターズール(Taazour)」を設置した。教育、基礎インフラ設備の充実、雇用推進を軸に政策を進め、その例として、最貧困層の62万人に対して国が100%保証する国民健康保険制度の開始などが挙げられる。このように、公平な社会への方向性が徐々に示されている。

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