第8回:ドバイが掲げるイノベーションビジネス =儚い夢か金の卵か

  • 2021/06/10(木)

前稿で見てきた通り、ドバイが2020年に受けた経済的な落ち込みは衝撃的なものであった。実質域内総生産(GDP)の下落幅はドバイショック時を大きく上回ることが予想され、もともと厳しかった財政状況にさらに追い打ちをかける事態となった。しかし、こうした状況であるからこそ、「ドバイは夢を売る商売」を止めることができない。ヒト・モノ・カネを惹きつけられなくなればドバイのビジネスモデルは破綻してしまうからである。この厳しい状況を打開すべくドバイが売り込む次なる夢が「イノベーション」だ。それは果たして儚い夢か、それとも金の卵となり得るのか。(永井希望=ksnコーポレーション代表取締役社長)

■これまでの蓄積が武器に

ドバイは今年3月以降、「ドバイ2040アーバン・マスター・プラン」をはじめ、「ドバイ・ストラテジック・プラン2030」や「ドバイ・クリエーティブ・エコノミー・ストラテジー」など、その成長戦略と未来を示したビジョンを矢継ぎ早に公開しているが、こうしたビジョンの中で成長戦略の主軸に据えられているのがイノベーション領域である。ここだけを切り取ると、またドバイが最近流行りの派手な夢を売ろうとしているように見えてしまうが、実はドバイは14年に「ドバイ・イノベーション・ストラテジー」を発表しており、この時点から世界で最もイノベイティブな都市になることを目標に掲げている。この戦略では、宇宙や行政サービス、再生可能エネルギー、交通などといった重点分野が定義されており、こうした流れの中からアラブ首長国連邦(UAE)/ドバイの宇宙開発計画の中核となるモハメド・ビン・ラシドスペースセンター(MBRSC)や電子政府推進機関であるスマート・ドバイなどが設立され、また単体では世界最大となるMBRソーラーパークの本格的な建設や、ハイパーループ、そして空飛ぶタクシーなどの構想が始まった。ここからも分かる通り、ドバイのイノベーションに対する取り組みにはこれまでの蓄積という強い裏付けがあり、こうして時間をかけて取り組んできたプロジェクトが、現在のドバイのイノベーション領域の顔となっているのである。このように、ドバイはコロナ禍を受け新たなテーマに飛びついているわけではなく、これまで育ててきたものをさらに成長させ、そして刈り取ろうとしているということは、重要なポイントだと言える。

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