第19回:米軍のシリア撤退で存在感増す3カ国

  • 2019/12/05(木)

シリア内戦はどうなってしまうのか。米トランプ政権が10月6日に同国北東部からの米軍撤退を発表したことで、シリア情勢が改めて紙面をにぎわせた。大手メディアは、「米国のクルドに対する裏切り」と、その延長線上での「トルコによるクルド弾圧」という観点から、米軍撤退の是非を論じている。確かに、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」掃討に貢献したクルド人を見捨てることで、米国に対する同盟国からの信頼の失墜を招くという危機感は、共和党内部からも示されており、米国の安全保障政策の在り方を考える上では議論すべき問題だ。一方で、米国視点でいくらシリア内戦を論じても、米軍撤退後のシリアがどうなるかは一向に見えてこないだろう。(増野伊登=三井物産戦略研究所)

■泥沼化の間隙突いたアスタナトリオ

なぜなら、足元のシリア情勢を理解する上で重要なプレーヤーは、今や唯一機能しているシリアの和平枠組み「アスタナ・プロセス」を主導するロシア・トルコ・イランであって、米国ではないからだ。英王立国際問題研究所(チャタムハウス)のリーナ・ハティーブ研究員は8月、トルコで開催された中東関連の会議で、米国はオバマ政権期、イランとの核合意、包括的合同作業計画(JCPOA)の締結を優先し、「アラブの春」という眼前の問題を放置したことで、シリア内戦の泥沼化を許したと指摘している。その間隙を突いて影響力を増してきたのが、アスタナトリオと呼ばれるロシア・トルコ・イランだ。特にロシアは、内戦に関係するシリア内外のプレーヤーとおおむね良好な関係を持ち、シリアの政府・反政府勢力間の停戦協議で中心的な役割を果たしてきた。「今世紀最大の人道危機」とも言われるシリア内戦だが、ロシアが軍事介入を開始した2015年以降、死亡者数は明らかに減少している。

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